Site Loader

今から干支が一周するほど前の、2007年12月のこと。

僕は仕事でがっつり使っていたキヤノンの1D Mark IIやEOS 20Dを売って、EOS 1Ds Mark IIIを買った。そしてすぐにそのカメラを持って初めてアフリカ大陸、年末のモロッコへ旅に出た。

それまでもよく海外には行っていたけれど、旅ではフィルム撮影ばかりをしていて、『デジタルで海外を撮るのはまだ先だね』なんて言いながら、100本を超えるフィルムを毎回持って移動していた。NEWマミヤ6やライカM5、HEXAR RFなどをメインとしつつ、アジアを中心に旅をしていたのだ。

それがデジタルカメラが2000万画素を超えるようになって、はじめて『海外もデジタルメインで撮影してみようかな』と思えたのがこのEOS 1Ds Mark III。旅と言えば、今まで当たり前のアジアから、初めてのカメラなら初めての大陸へ行ってみよう…とモロッコへのチケットだけを取り、宿も行く場所も下調べもせずにカサブランカの空港に降り立ったのを思い出す。その後『地球の歩き方』を見ながら、なんとかサハラ砂漠まで行くことができた。初めて見た砂だけの大地を見て感動したはずだが、すぐに確認できるデジタルカメラなのに、今見るとフィルムの時のような枚数しか写真を撮っていない。カメラのパフォーマンスなのか、メモリーカードの問題なのか…いずれにせよ、その時のデータを見るとたくさん写真を撮った日でさえ、3ケタで余裕で収まっている。今なら1日何千枚と撮ることだって全然珍しくないのに…。

ここから始まった旅で、初めての大きな写真展『世界で一番青い空』を2009年に開催。そして2019年開催の『SAHARA』にも繋がっていく。

今ではモロッコに行くとサハラ砂漠にしか興味がないし、一目散にそこに向かうようにしているけれど、初めての時にはいろんな都市をいくつか回っていた。マラケシュに立ち寄ったりしているのも、今見るととても思い出深い。あそこで飲んだオレンジジュースはかなり美味しかった…ということしか記憶してなかったけれど、ハードディスクに残されていたデータを見ると、そうそう、このゴミ捨場はかなり好きだったなぁ…ということを思い出した。

遠くにマラケシュの街のモスクが小さく見える郊外の広大な土地には、大量のオレンジやペットボトルや空き缶やビニールなどが無造作に捨ててあり、自然とゴミ捨場になったような雰囲気だった。そこにはゴミを捨てにくる人間だけでなく、放牧されている羊やヤギが群れをなしていたり、どこからともなくロバや犬、そして空からは見たこともない鳥なども集まってきていて…まさにカオス!

その光景に感動しながらたくさんのシャッターを押していた。被写体を変え、光を変え、レンズを換え、メモリーカードも換え、たくさんの時間をここで過ごしたことがハードディスクに残された写真のEXIFデータからもよくわかる。写真を撮りながらアフリカから元気をもらい、その後、初めてのサハラを見ることになるのだ…。

あのゴミ捨て場は今ではどうなっているだろう?ジャマ・エル・フナ広場と同じように、12年前と何も変わらず、そこに存在していてほしいと願う。